素描

酒場のマジックアワー

仕事を無理やり片付けて、半年振りぐらいに訪なう雑色の酒場。 品川を出る頃にはまだ降っていた雨が、最初のビールを飲み干す頃にはキレイに晴れていた。すると、迷い犬が一匹、大きく開け放ったままのドアからご来店。 モサモサした毛並みの黒い小型犬。 店…

清潔でとても明るい場所

その男は、あまり楽しくない酒を飲んできたようだ。 日に焼けた浅黒い顔を高潮させ、時折聞き取れないほどの小さな声で何事か呟いては、頷いたり、首を振ったりする。その合間にグラスに残ったぬるそうなビールを口に運ぶのだが、グラスの中身は一向に減ろう…

⇒奥沢

向かいの座席に座った、もうさほど若いともいえない女が、袋に入ったままの菓子パンをもごもごと頬張っている。周囲の人は皆、もうそんな光景には慣れ切ってしまっていて、誰もがそれを当たり前の風景として受け入れている。 もちろん、僕だってそうだ。雨の…