山元さんちの野菜餃子

先日、久しぶりに予約が取れ伺った荻窪・蔓餃苑で食べた一つの餃子が、数日を経て尚、僕の心を捉えて離さない。

苑主であり、マンボ演奏家にして入浴剤ソムリエ、マン盆栽家元、グリーンランド国際サンタクロース協会公認サンタクロースなど多岐に渡る活動で知られるパラダイス山元氏が「メニューに載せていない一品ですが」と出してくださった餃子、その名も「山元さんちの野菜餃子」。

餡に野菜だけ(?)を使用したその餃子は、口中にほおばると、皮の中で程よく蒸しあげられた刻みキャベツの甘さ(ザクザクした食感も小気味良い)、ピリリと強めに効かせた胡椒のパンチ、それらを香ばしい胡麻油の風味が纏め上げ、これまでに口にしたことのない味わいの餃子だった。

聞けば数年前までは定番メニューだったのだが、苑主が餃子界における金字塔「おかひじき餃子」を発明して以来、その座を追われて久しいメニューとのこと。

その苑主をして「未だかつて、正確に内容物を言い当てた人はいない」と言わしめる餃子。
確かに何に由来するのか、想像のつかないなんともいえないコクというか、旨みがある。
その旨みがゆえに、野菜だけの餡でも食べるものに物足りなさを感じさせない。

ああ、あの旨みの正体は一体、何なのか。
*1

近頃自作の餃子の味に一定の自信を得て、内心で師の味に近づいた、と慢心の見え隠れするようになった(自称)弟子にとっては、そのひときれの餃子から、一つの道を窮めることの重さ、その道程の遠大さを、思い知らされた味わいだった。

4人前の餃子フルコースと、苑主もその暴飲を称えてくださるほど大量のサッポロラガー(通称・赤星)を堪能して苑を辞すと、日中から降り続けていた雨が、雪に変わっていた。

嗚呼、餃子の道は一日にしてならず。

その道のりの厳しさと寒さに震えながら、荻窪駅までの道を戻ったのであります。

*1:(追記:舌が干しえびの存在をうっすらと記憶しているような...)