季節の終り

季節の終わり目を知るのは大抵いつも、それが終わってしまった後のことだ。
ずっと季節の終りも始まりも気に掛けないまま、ある日不意に「ああ、終わっていたのだな」と気づく。

古い居酒屋のカウンターで傾ける熱燗の暖かさ。
街路樹の銀杏の実の匂い。

あんなに暑かった今年の夏も、もう遠いことのように思える。
数回鳴らして、ただ着信履歴だけを残し、それきりの電話。
酔った勢いで戯れにかけた電話。
きっと向こうからかかってくることはないのだろう。

季節の終りは、たいていそんなものだ。