からくり

くりから、と言ったり、からくりと言ったり、店によってさまざまである。
うなぎの串焼きの話だ。

カウンターの中の店主に創業を尋ねると「50年」と、こともなげに返してきた。

50年。

カウンターの隅には先代の奥方と思しき人が腰掛けて、常連客の相手をしている。
50年も同じ仕事、商売を続けるのは、並大抵の努力ではなかっただろう。

からくり二本。
鯛の味噌漬けの串焼き。
ビールとひや酒。
サワー。

古いカウンターに一人で座って、程よく煙や脂のしみこんだ壁の品書きをぼんやりと眺める。
何かを考えているはずなのだが、考えるそばから、あぶくのように消えていく。
曖昧で輪郭のない時間。

50年前で時間が止まってしまったような店で、僕の時間も、そうやっている間だけ、止まっているのだろう。