最近の読書

沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)

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沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下) (新潮文庫)

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沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇 (新潮文庫)

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沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上) (新潮文庫)

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沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下) (新潮文庫)

期待値高かったが、主人公をはじめとして、登場人物の造型があまりに類型的に過ぎる。
また、それらの人物の心理の襞というか、陰影が描かれることなく、非常に稚拙。
発表から数年経過し、モデルとなった実際の社会的な出来事に対するスキャンダラスな告発(当事者の一方に著しく偏った視点によるものだが)として一定の評価はできるが、正直、会長室篇の後半は読むのがつらかった。

本作は社会的に注目度の高い事件の当事者をモデルにし、容易に特定できるよう意図的に人物を配置している。実社会において、非故意による過失、あるいは意図的な怠慢、無自覚によって重大な事故を引き起こした企業の経営者やそれに準じる人々は、その過失、怠慢の度合いによって、公正に裁かれるべきである。
だが一方、不特定多数に対して、自らの意見を発信する手段を持った人間が、予断や偏見を持ってその罪を糾弾し、実際の過失や怠慢以上に、その人物の過ちを誇大に表現することは文芸においてもジャーナリズムにおいても唾棄すべき行為であろう。

事故の痛ましさ、遺族の苦悩を目のあたりにして、著書が義憤に駆られるのは分かるが、他方、加害者として描かれた多くの人々とその家族は、本作が世に流通し続ける限り、回復不能な被害を受け続けることにもなりかねない。

モデルとなった人々の中には鬼籍に入って久しい人もいる。

無人島に生きる十六人 (新潮文庫)

無人島に生きる十六人 (新潮文庫)

友人から長く借りっぱなしだったものをようやく読了。
苦境にあっても、人生を楽しむこと、向上心を保ち続けることを平易な表現で少年少女に伝えようとしている。
ある意味上述の「沈まぬ太陽」の主人公、恩地始の愚直なまでの一途さ、にも通じてはいるのだろうが、ジュヴナイルである本作の方が、人間の本質に正面から向き合っているように思える。
昔の日本人の背筋の伸び具合が偲ばれる小品。

川は静かに流れ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

川は静かに流れ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

スゴイ。
実はまだ1/3ほど残しているのだが、最初の数ページで完全にアディクトされてしまった。
あまりに入り込みすぎてしまい、ここ数日、終日感傷的な気分が抜けず、困ってしまうほど。
ふう。